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医療機関でみられる人事労務Q&A

医療機関でみられる人事労務Q&A

『退職した職員からの年休買取り要求に応じるべき?』

Q 「先日、既に退職した職員から「在職中に年次有給休暇(以下、「年休」という)が消化できず、残余日数があったので、
買取って欲しい(給与で清算してもらいたい)。」という要求がありました。このような要求に応じなければならないのでしょうか。」

A 「年休の取得権は退職と共に消滅しますので、消化できなかった年休の清算に応じる必要はありません。」


詳細解説


員は、入職後6 ヵ月間の継続勤務によって、年休を取得する権利を得ることができます。
初年度であれば年10 日の年休が付与され、その後1 年経過ごとに日数加算があり、
最大年20 日が付与され、時効の関係により翌年までそれを繰り越すことができます(労働基準法第39 条)。

回の質問のように、在職中に付与された年休の日数をすべて消化することができずに退職をしてしまうことで、
残余日数の損得に対する感情が芽生え、職員から清算を求められるという事例は、しばしばみられます。
そのため医療機関の中には、退職予定者の退職日が近づいてきた時期に、経営者がその残余日数を買取るというケースがありますが、
こうした行為は、以下に定める行政解釈により禁じられていますので注意をしなければなりません。

「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39 条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じ、
ないし請求された日数を与えないことは、法第39 条違反である(昭和30.11.30 基収第4718 号)」

かしながら、上記の年休の買取りは、その権利を有する在職中に限られ、退職後については請求権すら消滅します。
よって退職後にその残余日数について清算を求められても、それに応じるか否かは経営者の判断となり、
買取らなければならないという法的義務は発生しません。
そのため、職員からの要求に応じなくても、違法として扱われることはありません。

っとも、こうした問題が発生する根本には、在職中に過重労働が続き精神的に疲弊をしたことで離職に繋がった、
ということも考えられます。
従って、退職後にこうした問題を生じさせないためにも、年休の取得は必要と考えるべきでしょう。




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医療機関でみられる人事労務Q&A

医療機関でみられる人事労務Q&A

『経歴詐称の職員を解雇したい!?』

Q 「採用選考時に提出された履歴書において、前職では同業で5 年間正職員として勤務していたと記載されていたものの、
実はパートタイマーとして2 年間しか勤務していないことがわかりました。働きぶりの良くない職員ですので、
この経歴詐称を理由に解雇したいと考えているのですが、問題ないでしょうか。」

A 「経歴詐称による解雇は、その採用によって労働力の適正な配置を誤らせるような
重大な詐称でなければ、権利の濫用として無効となる可能性があります」


詳細解説

働力人口における非正規労働者数が増加傾向にある中で、特に若い年齢層の労働者が正職員として働きたいとの希望から、過去の経歴を詐称して応募してきたという話を耳にすることが増えてきました。
その多くは、採用後の働きぶりで発覚するようですが、ご質問のように解雇まで考えるケースもあるようです。
実際に解雇を検討するに当たっては、形式面と実態面に分けて考えることがポイントになるでしょう。
まず形式面ですが、経歴詐称を理由に解雇を行うためには、就業規則においてあらかじめ経歴詐称が解雇事由となることを定めておく必要があります。
一般的には、「重大な経歴を偽り、採用された場合」といった旨の規定がされており、それを根拠に解雇を検討することになります。

に実態面ですが、「重大な」経歴詐称が存在するのかということがポイントとなります。
ここでいう「重大な」とは、個々の事案によって解釈は異なりますが、その経歴詐称によって労働力の適正な配置を誤らせるような場合、と解釈されています。

えば、看護師募集をした際に、看護師の資格を持っていると申告していたにも関わらず、実は資格を持っていなかったというようなケースが該当します。

回のご質問では、勤務年数や勤務形態が異なっていたとはいえ、「重大な」とは考え難く、仮に解雇をした場合には、
労働契約法第16 条に定める「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
という規定に抵触する可能性があるため注意が必要です。

うした問題を防止するためには、採用面接時に過去の経歴や仕事内容について十分確認すること、そして、そもそも「経歴詐称」と「働きぶり」は別問題であることから、働きぶりが悪いのであれば注意指導を重ね、改善がみられない場合には懲戒処分を検討するといった方法などが考えられます。



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医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

『緊急呼出(オンコール)制度を運用する上での注意点』

Q:職員に対して、休日に呼び出して仕事をしてもらうことがあります。緊急呼出
(オンコール)制度として、1 回あたり数千円の手当を支給していますが、運用上
注意すべき点があれば教えて下さい。

A:緊急呼出(オンコール)制度下では、その時間帯は具体的な業務に従事していな
いため、通常労働時間としては扱われませんが、場所的拘束性や時間的拘束性が
高い場合には労働時間として解釈され、その時間分の賃金支払いが必要となる場
合があります。

詳細解説:

患者の容態急変などの緊急時に備え、職員に携帯電話を貸与し、
いつでも緊急出勤を要請できるように備えさせるといういわゆる
緊急呼出(オンコール)制度については、多くの医療機関におい
て採り入れられています。ところが運用方法や管理方法によっては、
自宅等の滞在時間が労働時間の適用を受ける「待機時間」として扱われることがあり、
正しい管理方法を理解しておく必要があります。
そもそも労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を指しますので(三菱
重工業長崎造船所事件(最高裁一小平12.3.9判決))、緊急の呼出を受けるにあたって、
自宅等の滞在時間がいわゆる「待機時間」と判断されないように運用することが重要です。
この場合、緊急時には速やかに出勤ができるように自宅から離れてはいけない等といった
場所的な拘束を受ける場合や、指定時間には必ずすぐに電話を受け勤務先に駆けつけなけ
ればならないといった時間的拘束性がある場合には、「労働時間」と考えられる可能性が
高いものと考えられます。実際、様々な労働裁判例において、待機時間は労働時間として
認定がされていますので、注意しなければなりません。

一方で、場所的拘束性や時間的拘束性が低く、携帯電話に出なかったことや連絡によっ
て出勤をしなかった場合に注意指導や罰則適用を受けることのない状態であれば、
労働時間として扱われる待機時間とは考え難いと捉えてよいでしょう。
事実、緊急出勤に備え自宅待機をする宅直勤務(オンコール勤務)を行っていた産科医が
宅直勤務は労働時間であるとして、その時間分の割増賃金支払いを求めた奈良県(医師・割増賃金)事件
(最高裁三小平25.2.12 決定)では、この宅直勤務制度が産科医同士で独自で運用されたものであり、
病院の内規などにもその制度化がなかったことから、その時間帯における労働時間性
が否定されました。
以上から、緊急呼出(オンコール)の運用
にあたって労働時間として考えられるのであれば、その時間分の賃金の支払いが不可欠と
なりますので、こうした支払いを避けたいということであれば少なくとも場所的・時間的
拘束性を緩和する必要があります。

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役員退職金規定について

先日、当センターへ役員退職金規程について質問がありました。

医療法務・税務ともにかかわってくる問題です。

まず、医療法の規定で問題になりますのが、
高額な退職金の場合、出資の払い戻し=配当とみなされます。
退職金支給時の利益や資産のバランスから
役員退職金が高額すぎないことが重要になります。

一方、税務の視点からは、倍率が同業他社と比べて妥当かどうかが問題となります。
通常理事長で3倍以下、理事・監事で2倍以下が一般的なようです。
従来この倍率の意味は「功績倍率」ですので、
その理由を医療法人に対する貢献度の視点から
税務署にきちんと説明できるかが重要となります。

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自家診療の取扱い 2

前回の続きです。

なぜこのような処理をするかといいますと、
法律(健康保険法)と
税金(所得税・法人税)の両方の側面からの課題があるからです。

まず、法律(健康保険法)では、一部負担金は、患者は支払わなければならないと規定し、
同時に医療機関は支払いを受けると定めています。
従って、一部負担金を受け取らないという行為自体が法令に抵触しますので、
処理上は受け取った形を取らざるを得ません。

一方、税務の場合、福利厚生費として医院の経費として全額算入されます。
この場合の福利厚生費は、従業員に支払う、見舞金等と同じような扱いとなります。
見舞金には、受け取った従業員に税金の負担はありません。
しかし、常識的な診療以上に従業員が自家診療を受けていた場合は問題になります。
その免除された窓口負担分は、給料の一部でないかと税務署は考えるからです。
給料であれば、源泉所得税を徴収しなければなりません。

通常は、常識的な範囲内での自家診療ですと
問題になることはないと思いますが、
税務調査対策のためにも、自家診療の窓口負担分は売上に計上し、
同額を福利厚生費としてきちんと処理しておく事が重要となります。

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自家診療の取扱いについて

先日、自家診療の取扱いについて
お問い合わせをいただきました。

診療所において、スタッフが外来診療を受診したときに
自己負担金を免除することが行われているとききますが、
この免除は問題がないのでしょうか。
またその経理方法を教えてください。


結論としましては、きちんとした経理処理がされていれば、
問題はございません。
この場合の会計処理は、免除した自己負担金を両建てで計上します。
【借方】 福利厚生費 / 【貸方】 売上 

実際に従業員を診療する場合(自家診療)は多くの医院で行われています。
この場合、その医院が、社会保険に加入していますと
従業員への診療も社保へ診療報酬の請求をすることができます。

一方、社保ではなく医師国保に加入している場合は、
規定により自家診療は請求できません。

どちらの場合も、窓口負担を取らないで診療することになります。

この場合、診療実績があるにもかかわらず、
窓口負担分はゼロのため売上に計上されません。
特に問題なさそうにも思えますが、
原則的には窓口負担分の売上計上が必要となります。

つまり、税務上は、相殺せずに借方貸方の両建てで経理処理することになります。

次回に続きます。

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